戦争中の長い棒に関する発明=30円
戦争中のことです。
私は学生時代に作った戦車の模型が表彰され、副賞として習志野の軽連隊にて戦車(89式)に載ることができました。有頂天です。
しかし、中からの視界は最悪でした。
戦車の窓は目の幅くらいの隙間しかなく、控えめに表現しても「何にも見えません。」
少しでも車体が上下に傾けば見えるのは地面だったり、空だったりします。視界のある戦車長の命令が、肩に乗っかった足で蹴られて操縦者に命令がでます。
なんというか、そういったぞんざいさが"昔の感覚"ですね。
爆撃に備える棒
戦時中の発明品は「長い棒」に縁がありました。
空襲時には、当然飛行機が飛んできます。それを探知したり、遠くの基地に通信したりする電波塔
直径1.5mの棒を30m上空まで立てなければなりません。今のような通信距離の長い超短波ではなく中波なので、どうしても高くにアンテナを張る必要があるのです。
当然この「棒」は壊されたら困ります。爆撃を伝える棒が爆撃で壊れたら、とても困ったことになるので、爆撃がくるときは、爆撃から隠しておくことにします。
その棒を高くあげる方法は、簡単に言えばハンドルをぐるぐる回して、どんどん小さいパイプを高く上げます。「繰り出し電柱」と呼ばれます。やや旧式のラジオのアンテナと同じように、中から細い棒が出てくることで、アンテナが伸縮する仕組みです。
しかしこれが30mの長さになると、少しでも隙間があると、大分傾いてしまうのです。これが故障の原因になる場合があります。
私の発明――というか改良はこの「繰り出し電柱」を改良し軸心を狂わせずに高く上げられるようにしたのです。大まかにいうと、電柱の節々にコロをつけて、自動的に中心をあわせ、高々とアンテナが伸びるように改良しました。
アナログプレーヤーや、産業機械の開発も同様なのですが、私の得意と呼べる分野は「いかに物理現象に忠実に認識し、利用し、正確性を出していくか?」といえるのかもしれません。
くにゃる空中線(アンテナ)
これは軍から「なんとかしろ」といわれて「なんとかした」発明です。
師団通信車には当然通信のためのアンテナがあります。
真上から見ると馬蹄型(アルファベットのU)の形をしたアンテナが車についているのです。これを4本の支柱で持ち上げます。
当時、東南アジアや島のジャングルを抜けるたびに、このアンテナはつるに引っかかってしょっちゅう壊れていました。しかし、通信車であるため、アンテナの形と高さはこのままで、何とかしなければなりません。
そこで、なにかとお付き合いがあった軍部から、言われて改良を加えました。
アンテナ支柱の根元をくにゃらせたのです。
アンテナ上部に力が加わると、その力に抵抗せず、根元から曲がり、力がなくなるとまたピンと立つような装置を作りました。イメージすると「起き上がりこぼし」のようなものです。
報酬として30円いただきました。
当時(65年前)から銀行に預けておけば・・・。
夢が広がります。
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2009.1.22