オーディオテクニカとの出会い
私がオーディオ機器の開発を始めてから、特にお世話になった企業はオーディオテクニカです。ここでオーディオテクニカと当時の社長であった松下秀雄さんとの出会いをご紹介します。
オーディオテクニカとは?
オーディオテクニカは、もともとアナログプレーヤーのカートリッジを製造販売している企業です。オーディオブームのときも堅実な仕事をし続けたこともあり、社風はとにかく真面目で堅実な印象でした。そういったところであると、私のような人間がちょっと異質なんじゃないかなとも思います。
そもそも、オーディオテクニカに在籍することになったきっかけは私がオーディオプレーヤーを研究・試作したときに開発した「レコード盤の吸着システム」を商品化してもらえる企業を探し始めたところからです。そのときにオーディオテクニカの垢抜けたカートリッジの広告を電車の中吊りで見たときに、思ったのです。
「そうだここにお願いしよう!」
そのとき、山水電気の国内営業部長である高野正明さんを紹介されました。高野さんは3号機を高く評価いただいた後、とにかく「話の席を…」と言うことで、山本祐章専務を会いに東京郊外の町田市成瀬にあるオーディオテクニカ本社に伺うことになったのです。私が伺ったときは、本社は木造二階建てでした。
広告で見た垢抜けたイメージとは違い、オーディオテクニカ本社をみて「素朴だなぁ」と感じました。
「さて、商談だ。」
松下秀雄さんとの出会い
初訪問で松下さんに初めてお会いしたときに、レコード盤吸着システムの商品化の話はそっちのけで、開発したプレーヤーの方に話の焦点がいきました。
私が開発での苦労話や工夫したポイントを話すのに熱中してしまって、全然本題に入ることはできません。松下さんもカートリッジの開発で非常に苦労をされていたので、プレーヤーの問題点は熟知しており、それを一つ一つ乗り越えるアイディアと情熱をぶつけ合ったところ、お互いの熱が合わさって、エキサイトしたのです。そんな話の流れで、松下さんに私が開発したプレーヤーの3号機をお見せすることになりました。
吸着盤の話は・・・。どうなったか、覚えてません。
松下さんは小学生のころからの、年季のはいったオーディオ通です。蓄音機の世界一のコレクションをもたれており、優れたプレーヤーの音は飽きるほど聞いてきたと思います。そんな経歴を持つ方に私のプレーヤーは「異次元の音だ」という評価をいただけたことで、究極のプレーヤー開発がスタートしたのです。
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2008.11.17